現在のトヨタ車にセリカという名前がなくなって久しいですが、セリカを知る人にとってその名前は特別な存在感を持っています。とりわけ、その存在感の源となっているのが初代セリカです。登場は1970年といいますから、いまから44年前のことになります。しかしこのスタイルはどうですか? わずか4mちょっとの全長と13インチしかないホイールなのですが、実に伸びやかなフォルムが特徴です。初代セリカが発表されると、その注目度は非常に高く、サービスエリアでは質問攻めだったとのこと。かなりの熱狂で迎えられたクルマでもあったのです。
- ■安さも魅力のひとつ
- スタイルのよさも去ることながら、セリカのもうひとつの魅力は価格の安さにありました。当然ながら当時の給料からすれば、日本車もちょっとプレミアムな外車を買うほどの価格ではありました。しかし、ここに初採用したフリーチィスシステムは、実は幅広いユーザーの味方にもなったのです。基本的に何もついていないベース車両を選び、好きな装備を付けてオリジナルのクルマを造ることができるのですが、不要なものはつけなくてもよいという非常に合理的なものでもあったのです。
- ■より個性的であれ
- 時代はまさに、何もかもを新しいものに変えてしまおうという勢いがあった1970年。なによりもセリカというクルマは、日本のクルマの価値を大きく変えてしまいました。移動する手段だけでもない、そしてまた速いだけでもない。目に見えるものが機能や性能として歓迎されたモデルとは違い、セリカの価値はなかなか目で見えるものでなかったのです。若者でも手に入れられるリーズナブルさを持ちながらも、トレンドのけん引する高い価値観。この両立は、先行するマスタングが生んだものでしたが、まさにセリカでも実現してみせたのです。